人類の歴史とエネルギー源

人類の歴史とエネルギー源

人類とエネルギーの関係のはじまり

人類とエネルギーの関係は、人類が火を利用し始めたときから始まりました。このころの移動手段や運搬手段は自分の足だけでした。やがて遊牧や農耕が始まり、人は群れて暮らすようになりました。このころは馬が移動手段となり、牛馬が動力源になりました。やがて風力を利用した帆船が生まれ、水力や風力を動力元として利用し始めましたが、暖房や炊事のために使われる燃料は薪のまま変わりませんでした。

古代文明を衰退させたエネルギー枯渇

やがて都市が形成され、文明といえるものが生まれました。ローマ帝国では輸送の為の道路網を作り上げたことにより、燃料としての薪は遠方からに運ばれてくるようになりました。それでも滅びたのは、近隣の森林を使い切り、洪水が増え、燃料としての薪が入手困難になったからと言われています。薪というエネルギーの枯渇と環境破壊による文明の衰退を人類は既に経験しているのです。

産業革命とエネルギー

18世紀に入り蒸気機関が開発されると、産業革命が起こり、文明は大きく発展します。石炭をエネルギー源とする蒸気機関車や蒸気船が生まれ、工場も水車と違い場所を限定せず、増設も可能な動力源を得ることができたことで増えていきます。社会の生産力が向上し、人はより便利でより豊かな生活を享受できるようになりました。こうして人類は、新しい安価なエネルギー源が利用できるようになることで、技術の進歩とともに文明が発展することも経験しました。

石炭から石油へ

1859年にアメリカで新しい石油採掘方式が開発され、石油の大量生産が可能になると、石油の利用方法も急速に発展します。さらには1950年代に中東やアフリカに相次いで大油田が発見され、石炭は採掘しなければ確保できないのに対して、石油は井戸さえ掘れば噴き出してきたので、大量に安く供給されました。運搬しやすく、精製することで煙も出ない使い勝手の良いエネルギー源として石油は重宝され、石炭に変わる主要なエネルギー源としての地位を占めるようになります。これを石油革命と呼びます。

様々に利活用される石油エネルギー

石油は、さまざまな交通機関、暖房用、動力用などの燃料としてばかりでなく、製品の原料としても使われたため、エネルギーの消費量は飛躍的に伸びて行くことになります。更には、航空機、発電用の燃料と、利用用途が拡大し、電気エネルギーの利用が産業部門においても家庭部門においても普及します。社会の生産力も更に拡大し、豊かになり、それに伴い人口の増加ペースが早まったことなどから一層のエネルギー消費量の増加をもたらすようになりました。このようにして、石油は利便性の向上をもたらし、より高度な産業と文明を育みました。

石油依存による高度成長時代の陰り

しかし、1バレル1~2ドルといった安価で提供されていた石油も、石油ショックの時代を契機に価格が上昇し、先進国の高度成長の時代は終わりを告げます。変わって新興国が高度成長の時代を迎え、工業のさらなる発達やモータリーゼーションの進展等によりエネルギー消費量は増加していきます。ついに2008年、石油は1バレル100ドルを越えます。人類の富は産油国に集まり、日本などの非産油国はかつてローマ帝国の経験した停滞の時代を迎えています。2000年代の日本の停滞はもはやバブル崩壊の影響ではなく、老齢化社会に入ったことによる負担の増大、人口の減少、そしてエネルギー価格の高騰によるものなのです。

新しいエネルギーの台頭

近年、石油価格の高騰により、今まで利用されていなかった化石エネルギー、例えば天然ガスはパイプラインや液化天然ガスの運搬方法が開発され利用されるようになり、シェール石油やシェールガスも採算が取れるようになったことで利用されるようになり、石炭も安価であることから再び使用量が拡大しました。2019年2月末現在では原油価格は60ドルを少し切る水準で、シェール石油の採算水準で変動しながらも比較的安定して推移しています。しかし、今後も世界人口は増加する見込みであり、エネルギー消費量はこれからも増加し続けていくものと考えられ、石油などのエネルギー価格はいずれまた上昇に転じるものと考えられます。

原子力の現状

一時代前には、未来のエネルギーと言われていた原子力も、2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う福島第一原子力発電所事故により安全性基準が見直され厳しくなると、化石燃料に対する価格的な優位性を失い、長い年月管理しなければならない放射性廃棄物の処理問題が改めて着目され、未来のエネルギー源とは言えなくなってきました。もし成功していたら、ウランをほぼ全て利用できるようになり、人類の今後何世紀かのエネルギー源を確保できたかもしれなかった高速増殖炉の「もんじゅ」も2016年12月21日に廃炉が正式決定されてしまいました。

再生可能エネルギーの状況

再生可能エネルギーに期待する向きもありますが、現在の光発電は安価な石油エネルギーで発電装置を製造し、割高な価格で買い上げてもらうという制度上の優遇の上に成立しています。また、太陽光発電で使用する土地の広さは膨大で、日本のような人口密集国にはあくまで補助的なものです。恐らく、砂漠地帯では太陽光発電が使われる等、風、海流、地熱、バイオマスとそれぞれの特性に合わせて適材適所で使われることはあっても、何か一つのものが今までの石油の代替えになることはないでしょう。今は利用するエネルギー源を多様化することで、エネルギー価格の上昇を抑えている状態です。

日本にこそ求められる新しいエネルギー

人類文明は安定かつ安価なエネルギーなくしては、発展は難しい構造になっており、今後、石油価格が再び上昇することになれば、温暖化問題等を別にしても、人類全体がローマ帝国の経験した滅亡の時代を迎えることになります。それは、日本などの非産油国から既に始まっています。常温核融合炉は日本などの非産油国にとって、絶対に必要なものなのです。いや、さほど遠くない未来において人類全体のために絶対に必要なものなのです。