実用性については、ご存知のように核分裂炉は既に実用化されています。熱核融合炉については超電導コイルについては目途がたってきたようですが、ブランケットは難題です。超電導コイルによってつくられた強力な磁場の中に、外部からブランケットに冷媒を流し込まなければいけないのですが、冷媒の流れが磁場を横切れば電流が流れてしまうと懸念しています。強力な中性子の照射を受け続けるブランケットの耐久性や、ブランケットを抜けてきた中性子の被ばくを受ける超電導コイルの耐久性や温度維持も懸念です。更に燃料として使うトリチウムをブランケット部分で再生産する必要があります。また、実験炉の段階から巨大な炉を造る必要があることが、開発に必要な時間を要してしまう理由の一つです。
文部科学省のホームページで2018年7月24日に公表された「原型炉研究開発ロードマップについて(一次まとめ)[1]」に掲載されているロードマップを紹介しておきます。2025年にプラズマ点火し、2035 年末ITER重水素-トリチウム燃焼着火の時に原型炉移行を判断し、2050年以降のどこかで実用化準備完了と記載されています。中堅の技術者が現役の間は、実用化は無理という計画になっています。
常温核融合炉については、基礎研究がこれからですので人材や資源の投入の仕方によりますが、小型の炉で実験が開始できますので、ある程度技術的に詰めたものが熱核融合炉の25年よりは相当短い期間で実現可能であると考えています。